リーデル ヴィノムシングルモルトとソムリエシングルモルトの違いを徹底検証する
リーデル シングルモルトには「O(オー)」、「Vinum(ヴィノム)」、「Sommeliers(ソムリエ)」の3種類があります。
オーシリーズはステム(脚)が無く、ヴィノムとソムリエにはステムが付いています。
今回はステムありの「Vinum(ヴィノム)」と「Sommeliers(ソムリエ)』のシングルモルトを徹底比較してみます。どちらを買ったらいいか検討中の方、また既にヴィノムは持っているけどソムリエを買おうか迷っている方などは、是非この記事をご覧いただき、参考にしていただければ幸いです。
リーデル公式によるスペック説明
ヴィノム・シングルモルト
- 高さ: 115 mm
- 素材: クリスタル
- デザイン年: 1991 年
- ブドウ品種:シングル・モルト・ウィスキー
- 製法: マシンメイド
- 容量: 200 ml
- 生産国: ドイツ
- 販売数量: 2個
ソムリエ・シングルモルト
- 高さ: 115 mm
- 素材: クリスタル
- デザイン年: 1991 年
- ブドウ品種:シングル・モルト・ウイスキー、モルト・ウイスキー、ウイスキー
- 製法: ハンドメイド
- 容量: 200 ml
- 生産国: オーストリア/ハンガリー
- 販売数量: 1個
ほとんど違いはないように感じます。
わずかに外側に反り返った口元は、液体を舌先に注ぎ、甘味が強調されるよう工夫された形。この形状は最高級のシングル・モルトの甘い芳香を引き出しエレガントなまろやかさを強調します。
https://shop.riedel.co.jp/products/detail.php?product_id=70
比較的小ぶりであることも、空気とのふれあいをゆるやかにして少しずつアロマを開かせる工夫です。
短めのステムの上にのせたボウルがスコットランドの国花であるアザミを縦長に伸ばしたような形状なのは、楽しい偶然といえるでしょう。
細部にわたり工夫が施されているようです。このあたりもしっかりと検証していきます。
見た目の違いは?
まずは見た目から。
別々に見ると気づかないかもしれませんが、並べて見比べてみるとよく分かります。左がヴィノムで右がソムリエです。ソムリエの方が若干背が高く、幅もスリムです。
もう一つの特徴はステムの細さです。
右のソムリエの方が細いですね。
プレートのロゴはヴィノムがブロック体でソムリエが筆記体です。
そしてヴィノムがマシンメイドであるのに対してソムリエはハンドメイドです。
手に持った感じはどうか?
重さに関してですが、これにはかなり驚きました。
ヴィノムが117gなのに対し、
ソムリエは何と81gです!
形状はそれほど変わらないのに36gも違うのは驚異的です。
その秘密はガラスの薄さにあります。
精密なノギスで測ってみました。
リムの厚さはヴィノムが0.95mmに対し、ソムリエは0.80mmです。この0.15mmの差がどのような影響を及ぼすかは後述します。
それにしてもハンドメイドならではのガラスの薄さ。さすが熟練の職人技といった感じです。
それと、初めてリーデルのシングルモルトを購入した人によくあるのが、この独特なステムへの戸惑いです。
プレートを持つべきか、↑の写真のようにステムの部分をつまむように持つかです。実際私のまわりでも意見が割れているのですが、ステムが極端に短いためどうしても指がボウル部分に触れてしまいます。
私は始めプレートを持つ「プレート派」でした。なぜなら「RIEDEL.com」の公式では下のおじさん2人がこのように持っているからです。しかしプレートを持つためには、一度グラスを反対の手で持ち上げるというダブルアクションが必要でした。それが面倒になったので、最近ではステムをつまむ「ステム派」に鞍替えした経緯があります。
ブランデーなどはいまだにブランデーグラスを手のひらで覆うように持つイメージがあると思いますが、手の温度がアルコールに伝わってしまうので、良くありません。温めなくてもしっかりと香りが立つのでステムを持つスタイルが○です。
その印象からボウル部分に指が触れるのに抵抗を感じていましたが、少し触れた程度では温度が伝わるようなことはないので大丈夫です。ただ、正直どちらが正解かわかりません。自分が飲みやすいように持てば良いでしょう。
こちらはソムリエです。完全にとはいきませんが、ステムが細いためヴィノムほどボウル部分に触れずに持つことができます。
子供の指だったらいけそうです。
実際に飲んでみる
やはり実際にシングルモルトウイスキーを飲んでみなければ、このグラスの形状の真の意味を理解することはできないでしょう。
今回は以下の6種類を使って検証します。
スコッチウイスキー好きならすぐにピンとくる6銘柄ですね。
そう、ディアジオ社の「クラシックモルトシリーズ」です。※当時はユナイテッド・ディスティラーズ社(以下UD社)と言った
左から
- 「クラガンモア12年」スペイサイド
- 「オーバン14年」西ハイランド
- 「ラガヴーリン16年」アイラ
- 「タリスカー10年」アイランズ
- 「グレンキンチー12年」ローランド
- 「ダルウィニー15年」北ハイランド
UD社が所有するスコットランド国内の蒸留所から、各地の特性をよく表しているシングルモルトを集めたシリーズです。ただ、UD社がこのシリーズを新事業として発売したのは1988年のことですから、現在においても全ての銘柄がこの地域性に必ず当てはまるというわけではありませんので注意が必要です。
さて、実際に飲み比べていきます。
まず香りですが、ヴィノムとソムリエでそれほど違いは感じません。
両方ともグラスの形状が比較的ストレートに近く、リムが広がっていることもあり、アルコール感がほどよく和らいでいる印象です。樽由来の木の香りや、微かに柑橘系のフルーツの香りも感じられます。
香りの立ち方はそれほど違いを感じませんが、実際に飲んでみるとヴィノムとソムリエでは明らかに違うことがわかります。
リムの薄さの違いはたかが0.15mmですが、人間の唇の感覚はすごく繊細で、その違いははっきりと飲みやすさに現れます。そして味わいも、より繊細な情報を引き出すことができます。
そして今回の検証でインパクトが最も強かったのが以下の2本です。
タリスカーのアルコールの強さをほどよく抑え、タリスカー特有の潮の香りとスパイシーさははっきりと感じられます。
ラガヴーリンに関しては、普通はピートやヨード香が前面に出がちですが、このグラスに関してはチョコレートやハチミツなどのような甘い香りもしっかりと感じることができました。
ヘビーピートの個性の強い物や、カスクストレングスなどのアルコールの強い物ほどこのグラスの特性が生きると思います。実際に今回ラガヴーリンとタリスカーはそれぞれの個性の良いところをしっかりと引き出せていました。
反対にグレンキンチーのようなライトなタイプは香りがぼやける印象でした。
試しにヴィノムコニャックで飲んでみましたが、こちらの方が香りをしっかりと感じることができました。
結論
マシンメイドとハンドメイドによるガラスの薄さの違いは、口をつけた時の抵抗感と、グラスを口から話す時のスムーズさに影響を及ぼします。
それによって、少ないストレスで飲むことができるソムリエは、ヴィノムに比べ、より複雑な味わいを最適な状態で感じることができるとわかりました。それだけでもソムリエには十分な価値があると言えます。
あなたがもしヴィノム、ソムリエどちらも持っておらず、かつ専門の職種でない方なら、私はヴィノムをおすすめします。家飲みを楽しむには十分なグラスです。
専門職ではないけど、より本格的にウイスキーを楽しみたいと思っている方で、どちらを買おうか迷っているならば、ソムリエを1客買うことをおすすめします。両方買う必要はありません。
そして本職の方はソムリエ1客、あるいは両方買われてご自分で違いを確かめてみるという選択も私はありだと思います。
1客あたりの値段にすると、ソムリエはヴィノムの約4〜5倍ですから普通はなかなか簡単に手が出せないと思います。しかし、長く使うことを考えたら私はそれだけの価値があると思います。大事に使えば一生使えますから。
まとめ
「ストレートバーボン用」や「シングルポットスチル用」のように5大ウイスキー用に特化したグラスがあっても面白いのではないかと思ったのですが、ジャパニーズだけでもいろいろな個性があるので、あまり現実的ではないですね。
それなら『ヘビリーピーテッド』、『ライトリーピーテッド』、『ノンピーテッド』のようにピートの強さでシェイプに変化を付けてもいいのかなと思いました。
実際今回の検証結果にも現れていましたが、グラス形状の微妙な違いでピートの感じ方が変わってくるということがわかりましたので。
ですから、『シングルモルト』で一括りにするより、ピートの強さ、カスクストレングス等アルコールの強さ等で細分化してもらえると面白いと思いますが、リーデルさんには是非検討していただきたいです。
もしも本当にシリーズ化されたら、リーデル大ファンの私としては何としてもコンプリートしたくなってしまいそうです。
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